<DAY4,5,6>バルセロナ酒場紀行

f:id:orie13a:20161117201946j:image

なぁ、飯の話をしよう。
ポルトガルの古き良き街からバルセロナに飛んで、まず驚いたのはsex shopや24時間営業の店が煌々と主張していたことだ。それと同時に少しガッカリしてしまった。ほらだって、東京みたい。東京は世界で一番好きだけど、こちらにだって旅情ってものがあるじゃないか。
だからこの街では散策というよりも食べ歩きをメインにした。だって都会には美味いものが揃っている。

だから飯の話をしよう。

 

【セルセベリア・カタラナ】
バルセロナで有名なバルの名を調べると大抵ここの名があがる。バル初体験にはうってつけだとこの店を選んだ。入店して驚いたのが、カウンター席の周りを腹を空かせた客がハイエナのように今か今かとうろういていることだ。
テーブル席は名前を伝えた順番に案内されるが、カウンター席は空いたところを自分で見付け、早い者勝ちでありつくシステムなのだと近くにいた男性に教えてもらった。

f:id:orie13a:20161117164128j:image
スペイン語でメニューも読めず「初めてなので宜しければご一緒して下さい」と頼むと「喜んで」と返してくれた。名前はイドだと言う。
20分ほど待った頃、目を付けていた客が捌け、着席し、何から頼んでいいか考えあぐねたので目の前にあったアンチョビの2種のピンチョスを頼んだ。

f:id:orie13a:20161116202016j:image

アンチョビのフィレとチーズ・パプリカを載せたもの、キャベツ・玉ねぎの千切りにアンチョビと恐らくマヨネーズを和えたもの。
先の方は想像通りの味だったが、後者は素朴でありながら完成度の高いピンチョスだった。白身魚に載せたり、粒マスタードなんかと一緒に付け合わせとして真似るのも良さそうだ。

 

続いて頼んだのは獅子唐とワカサギのフリット。獅子唐の唐揚げはスペインの至るバルで食べることが出来るが、こういった組み合わせは酒呑みには嬉しい。赤提灯の酒場でも歓迎されそうなメニューだ。

f:id:orie13a:20161116202232j:image

あぁ、追加のワインが欲しい。そろそろ赤が欲しい。オーダーを伝えようとする。が、忙しいのかなかなか通らない。イドさんから指南が入る。この店は日本で言う鮨屋と似たところがあって、大きな声で呼ぶのではなく必要な時にあちらを見つめればその内、目が合う。その時に頼むのだと言う。

f:id:orie13a:20161116202352j:image

ゴーダ・カマンベール・ゴルゴンゾーラの蕩けた3種のチーズの上にトリュフオイルがかかっている。

f:id:orie13a:20161116202418j:image

レアの牛ヒレ肉をカリカリのトーストと分厚いフォアグラで挟み込んだ何とも都会っぽいおツマミ。パテを作ったことのある人なら分かると思うが、あれは生クリームが入っていれば入っているほどなめらかで美味い。とんでもないカロリーになるが、なんせカロリーは美味しい。フォアグラも脂の塊だが、牛肉の赤身と合わせて食べると程良い塩梅だった。この贅沢なピンチョスで〆てイドさんとはお別れした。日本に来たら鮨屋を案内しよう。

f:id:orie13a:20161117212433j:image

サンキュー Iddo!

 

【ESTERRI】

まだ飲み足りなかったのでハシゴ酒をした。
妙に日本人慣れした店長で「へいらっしゃい!まいど!」と迎え入れてくれた。日本人留学生がよく訪れるらしい。暫くすると「ベッキー知ってるか」と聞かれる。知ってるとだけ答えた。どうやら彼女が昔TVでオススメしたようだ。
とりあえずのワインをグラスで頼むと「いーっぱい飲んで下さい」注がれる。「いーっぱい入れて下さい」と返したらそれ以上絡まれなかった。

f:id:orie13a:20161117144000j:image

店長手作りの黒いソーセージを頼む。張りは無いが、皮にナイフを立てて裂くと柔らかな中身が顔を出す。妙にクセになる味だった。何が入ってるんだと聞くと豚の挽肉と血だけだと言う。それだけでこんな味になるものかと酔った頭で考えたが、たぶんプロは手の内を明かさない。赤ワインが進んだ。
美味かったので持ち帰りに少し包んで貰った。翌朝の舌でも美味しく感じたので、酔っていても確かなことは分かるのだなと思った。

かなり酔いが回っていたので店名も失念していたが、写真を撮った場所から遡って割り出すことが出来た。今時の携帯は本当に優秀だ。

 

f:id:orie13a:20161116203358j:image

f:id:orie13a:20161117213835j:image

翌日起きたのはお昼近くで、珍しく何の予定も入れていなかった。暇だからサグラダファミリアにでも行こう。平日だからもしかしたら空いてるかも知れないと考えた私がバカだった。チケットを買うだけで長蛇の列だ。気を取り直して10分ほど歩き、遅めのランチにすることにした。

 

【Embat】

f:id:orie13a:20161117212520j:image
ネットで調べたところ予約必須の人気店で、しかし悲しいかな予約は電話のみと書かれていたので賭けで向かった。バケーションシーズンを外していたからかすんなり入ることが出来たが、入店直後満席になっていた。やはり人気の店なのだろう。

f:id:orie13a:20161116203244j:image

アーティチョークのスープを初めにオーダーした。イベリコ豚の生ハムとウズラの卵、サワークリームが器に盛ってあり、卓上で熱々のアーティチョークスープをとろりと注ぐ。スプーンですくっても底の見えない濃厚なスープに生ハムの塩気を加えて味わうと何とも複雑な味がして美味しい。

f:id:orie13a:20161116203312j:image

続いてメインに選んだのは蛸のリゾット。しっとりと柔らかな蛸が蛸墨とトマトのライスに埋もれてよく調和していた。ただ、同じ海鮮を調理した飯という括りなら個人的には深川飯に軍配が上がる。蒸篭で蒸されたふっくら柔らかな米と浅利から出汁が香り、笑ってしまうくらい美味しいから。
比べるのは酷だが、先日のポルトガルでのランチが同じくらいのボリュームで€2.5だったから10倍近く値段が違った。

 

この日は筋肉痛もあり市内の観光バスに2時間近く揺られることにした。バルセロナの主要観光施設を外の風を受けながら眺めるのは実に気持ちが良かった。

f:id:orie13a:20161117142732j:image

 

【デ・タパ・マドレ】

ここもバルセロナでは日本人に人気の店だ。スペイン内陸部サラマンカ地方の料理を専門とする。若干お高めで観光地価格だが、旅先で必ず美味いものが食べれるならその保障額としては安い。

嬉しいことにハモンセラーノを10g単位で量り売りしてくれる。おひとり様でも勿論楽しめる。 まずはこれで飲むのが良いだろう。

 f:id:orie13a:20161116233809j:image

バルセロナならどこでも食べることが出来るパンコントマテという料理がある。パンにニンニクとトマトをこすりつけ、オリーブオイルと塩を振りかけて作る。シンプルだがパンの厚みやトマトの量・焼き加減によって仕上がりが全然違う。味そのものというよりは食感で美味さが分かれるのだ。だからバルセロナに行ったらパンコントマテを食べ比べてみると面白いはずだ(ここだけの話、セルセベリア・カタラナのパンコントマテはいまいちだった)。デ・タパ・マドレのパンコントマテは端がカリカリで香ばしく、酸味もちょうど良く美味しかった。想像に容易いが生ハムと相性が良いから、これを頼まない手はない。

f:id:orie13a:20161117140716j:image

f:id:orie13a:20161117162739j:image

余談だがパンコントマテには専用のトマトがあって、八百屋で吊らされた光景はカタルーニャ州の市場だけで見ることが出来るそうだ。ふつうのトマトと比べて水分が少ないのが特徴だという。

 

メインはトリッパを選んだ。これは本当に良かった。摩り下ろした玉葱といろんな部位の臓物、そしてソーセージが一緒くたにトロトロになっている。日本ではくし切りの玉葱や銀杏切りされた大根がスタンダードだから、新鮮だった。摩り下ろした玉葱はカレーや唐揚げで私もよく使うが、モツ煮でやるのには驚いた。こんな少しの違いなのに、何ともスパイシーで美味いのだ。あっさりのようでコクもある。これはデ・タパ・マドレに行ったら是非食べてみて欲しい。牛肉の石焼という鉄板メニューもあるが、ここは頑なにトリッパを勧めておく。

f:id:orie13a:20161116234026j:imagef:id:orie13a:20161116234149j:image

 

千鳥足で見た カサ・ミラカサ・バトリョ

f:id:orie13a:20161117203138j:imagef:id:orie13a:20161117114542j:image

私の腕が悪いせいでカサ・ミラの低層階が火事のように写ってしまった。

 

【コンセプシオ市場】

翌朝は寝覚めも良く、朝から飲もうと決めた。

バルセロナには50近くの市場があり、その大抵は朝8時に開く。市場の中には小さなバルが併設されていてひっきりなしに訪れる客の腹を満たしている。サン・ジョセップ市場やサンタ・カテリーナ市場が有名だが、観光地化されすぎていてあまり好みではない。だから126年の歴史がある庶民の台所、コンセプシオ市場へ向かった。

f:id:orie13a:20161117211144j:imagef:id:orie13a:20161117211251j:image

数人に簡単な英語で話しかけてみたがスペイン語以外話せないと伝えられる。言葉が通じないなら酒を飲んで笑っていればいい。出来たての料理が次々並んでいく、このバルのカウンターに腰を落ち着けた。

f:id:orie13a:20161117125422j:image

肉屋のおっちゃんと地元のおっちゃんが強いショットを飲ませてくれた。酒を飲めば皆陽気だ。

f:id:orie13a:20161117211119j:image

f:id:orie13a:20161117125516j:image

 バルセロナで一番心に残ってる飯は何かと聞かれたら、私はこの市場で食べたオムレツだと答える。日本でもスペイン風オムレツを食べたことがあるが全くの別物だった。じゃがいも料理を実はあまり進んでは食べないが、せっかくスペインに来たのだからと頼み、ほくほくと湯気が立ってる内にペロリと平らげてしまった。ローストされた玉葱がじゃがいもと仲睦まじく夫婦のように合わさっている。すっかりガタイのいいコックに胃袋を掴まれてしまった。

f:id:orie13a:20161117204629j:image

ハンバーグも粗々しくて食べ応えがあった。繊細さこそ無いが、強い酒を飲みながら笑い、素朴で美味い飯を食べるのは、満足度がすこぶる高い。

f:id:orie13a:20161117211051j:image

 

昨日の無念(?)を晴らすべくサグラダファミリアへ。噂に違わず荘厳だった。

f:id:orie13a:20161117150530j:imagef:id:orie13a:20161117150411j:imagef:id:orie13a:20161117150428j:imagef:id:orie13a:20161117150448j:image

 生誕のファザードから街を一望し、石で出来た長い長い螺旋階段を下った。

f:id:orie13a:20161117143420j:image

f:id:orie13a:20161117150621j:image

 2026年の完成予定後にまた会えるかしら。

f:id:orie13a:20161117152951j:image

 

結局、エンカンツの蚤の市、ピカソ美術館や百貨店を巡り、なんだかんだでバルセロナも満喫した。都会は消費に困らない。

f:id:orie13a:20161117155315j:image

日が暮れる頃、初のモロッコへ旅立った。

あとで身にしみたことだが、イスラム圏へ発つ前に浴びるほど飲んだのは大正解だったのである。

スポンサーリンク

広告